カスタムできない、忘れがちな「航続距離」という性能
皆様は、バイクを購入する際に「航続距離」を検討の基準に入れたことはありますでしょうか?
私が現在所持しているスズキSV650を購入する前は、ホンダCRF250Lに乗っており、オフロードバイクの「航続距離」の短さに苦労していました。
なので、SV650を選ぶ際は”馬力”や”車重”と言った性能と一緒に「航続距離」も検討事項の一つに加えていました。
今回はその時を振り返り、「バイクのキャラクターを表す航続距離」を解説していきたいと思います。
※ここでは航続距離のことを「タンク満タンにガソリンを入れたとき、空っぽになるまで走り続けられる距離」とします
タンク容量はバイクの性格を表す1指標である
画像:R1250 GS Adventure タンク容量はなんと30L
R 1250 GS Adventure | BMW Motorradbmw-motorrad.jp
航続距離 約630Km
私なりに航続距離についていろいろ考えた結果、
「タンク容量(航続距離)はバイクの性格を表す1指標である」
「バイクジャンル(特性)によって航続距離を決めている。航続距離にジャンルの性格が表れる」
という結果に至りました。
「なにをそんな当たり前なことを」とお思いになるでしょうが、少し解説させてください。
現在新車販売されている125cc以上のバイクは、タンク容量が9L~20Lの幅で設定されていることがほとんどです。
これは、多少前後はあれ、1000cc以下のエンジンの実燃費が20L/km前後で設計されているため、航続距離が
9×20=180km(最小)
20×20=400km(最大)
となり、中央値の平均航続距離300kmが、一般的なバイクの航続距離と言われております。
これは、一般的な日帰りツーリングの平均走行距離と大体一緒です。※1
このことから、公道を走ることを目的としたバイクのほとんどが、
「1日でタンク1杯のガソリンを使い切ることができる」
航続距離で設計されています。
※1バイクブロスさんの日帰りツーリングの距離アンケートより
https://www.bikebros.co.jp/bikeresearch/detail?id=63
各バイクジャンルの平均航続距離
画像:Ducati Multistrada 1260 Enduro こちらもタンク容量30L
新型 Ducati Multistrada 1260 Enduro | トラベル・エンデューロ
航続距離 約450Km
では、一般的なライダーが300km走れるとして、なぜここまでバイクジャンルで航続距離が変わるのでしょうか?
航続距離が長いバイクジャンルの例で考えます。
先ほどから画像を載せている「アドベンチャー」と呼ばれるバイクは、悪くない燃費のエンジンと、大容量タンクを載せているため、排気量に関係なく航続距離が500kmを超えるものが大半です。
これほど航続距離が長いのは、優れたエルゴノミクスと防風効果でほかのバイクと比べ長時間乗っても疲れにくく、普通のライダーでも1日の平均航続距離を長くできるからです。※1
※1 中にはガソリンが手に入れられない箇所も走れるようにと言われているものもあります。
反対に航続距離が短いバイクジャンルを挙げます。
ホンダCRF250LやヤマハWR250などのオフロードバイクは、軽量な車体と、排気量の小ささからくる燃費の良さがあるにもかかわらずタンク容量が小さく(7L)、航続距離が300kmを超えません。
これは、オフロードバイクが長距離の快適性能より、オフロード性能を優先して、薄いシートや、細くて接地面積が少ないタイヤを採用しており、長時間乗っているとほかのバイクより疲れがたまりやすく、1日の航続距離が短くなるためこれぐらいの航続距離で十分とされているからです。
各バイクジャンルごとに平均航続距離を表にします。(個人的な調査結果)
ネイキッドバイク | 200~300km |
ツアラー | 400~600km |
スーパースポーツ | 150~250km |
原付&スクーター | 100~200km |
アメリカン&クルーザー | 200~500km |
アドベンチャー | 400~600km |
オフロード | 150~250km |
これは個人的な感想も混じった結果なので、もちろん例外はたくさんあるのですが、各ジャンルの想定されている使われ方が、航続距離に表れているとは思いませんか?
一般的な「ネイキッドバイク」がほぼ中心値を示しており、カウルやスクリーンが付いている「ツアラー」「アドベンチャー」がほかのバイクジャンルより航続距離が長く設定されています。
逆に、極端な前傾姿勢と極薄のシートを持つ「スーパースポーツ」は他に比べ航続距離が短くなっており、ツーリング用途よりは日常の通勤・買い物に利用される原付&スクーターは極端に短く設定されています。
バイクの性格を表す航続距離
画像:Honda C125 驚異の燃費65km/Lを誇るがタンク容量 3.7L
タイプ・価格 | スーパーカブ C125 目的地は、新しい自分。 | Honda
航続距離 約230Km
「バイクジャンル(特性)によって航続距離を決めているのだから、航続距離にジャンルの性格が表れる」
今回お伝えしたいことはこの一文にまとまります。
ガソリンをたくさん積めば航続距離を延ばすことができますが、運動性能と引き換えになります。
一般的にタンクの位置というのは、バイクの中で最も高い位置にあり、むやみにタンクを大きくすると運動性能を低下させるためコンパクトにできるならコンパクトにしたほうが良いです。
設計者は常にエンジンの燃費と、航続距離をにらめっこしながら、最適な値になるようにタンク容量を決めます。
なのでバイクジャンルだけでなく、同じ排気量&カテゴリーのバイクでも、スポーティーに設計しているか、コンフォートに設計しているか、の違いが航続距離から見え隠れしたりします。
例を出すと今人気の250cc SSから2つ例を挙げます。
「Honda CBR250RR」 航続距離:約350km
「Suzuki GSX250R」航続距離:約500km
バイク好きならこの2つのバイクの違いは説明不要でしょうが、CBR250RRはスポーツ志向、GSX250Rはコンフォート(ツーリング)志向のバイクです。
その違いはCBR250RRがトップブリッジより低いセパハン、GSX250Rがアップ気味のセパハンという違いや、GSX250RがCBR250RRより10kg重いなどからわかるのですが、航続距離からも性格が見えますね。
GSX250Rは、CBR250RRほどの航続距離でよいならタンク容量をもっと少なくすることができます。しかし、それをやらなかったのはGSX250Rの性格をコンフォート寄り(ツーリングで使いやすい)にしたかったからでしょう。
上記の考え方、比べ方、意外といろいろなバイクに当てはまるので、ご参考になれば幸いです。
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